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HOME > オーキシンデグロン法

私たちは植物ホルモンオーキシンが、植物細胞内で特定の転写抑制因子を分解に導くことに注目し、この分解経路を異種真核生物に移植することでオーキシンデグロン(Auxin-Inducible Degron: AID)法を確立しました。この技術により、培地にオーキシンを添加するだけでAIDデグロンを付加したタンパク質を、半減期30分以下で分解することが可能になります。本技術はすでに、タグ付加が容易な酵母の研究分野では広く使われており、当研究室では哺乳動物細胞への応用を進めています。

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標的タンパク質を短時間に直接分解する。

オーキシンはIAA(インドール酢酸)やNAA(ナフタレン酢酸)などの化合物の総称を指し、植物細胞中でAUX/IAAという一群の転写抑制因子を分解誘導します。その際に、必要なユビキチンリガーゼSCF-TIR1複合体はTIR1サブユニットにオーキシンが結合することにより活性化されます。TIR1以外のSCFサブユニットが真核生物全てに保存されていることに注目し、TIR1を酵母や哺乳類細胞に発現させることで、オーキシン依存分解系を導入することができます。この細胞においては、標的タンパク質にAUX/IAA由来の分解タグ(AIDデグロン)を付加することにより、オーキシン存在下に分解を誘導することが可能になります。

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ヒト細胞の内在性遺伝子にAIDタグを導入する。

これまで、ヒト細胞において内在性遺伝子に直接タグを付加することは大変難しい状況でした。しかし2013年に登場したCRISPR/Casを利用したゲノム編集技術が一気に状況を変えました。私たちはCRISPR/Casを利用した内在性タグ付加を検討する過程において、面倒なクローニングを行わなくてもヒト細胞の内在性遺伝子にタグを付加する新たな技術を開発しました。この技術により、培養細胞の両アリルの標的遺伝子に一気にAIDタグを付加することが可能になりました。

ヒト細胞において、増殖必須因子を発現制御する。

私たちはCRISPR/Casゲノム編集を利用してヒトAID変異細胞を作成する技術を完成させました。この細胞においては、オーキシン添加により、半減期20分程度で分解誘導することができます。私たちの技術により、ノックアウトすることができないおよそ細胞に9%ほどある必須遺伝子の機能解析が可能になりました。私たちは本技術をマウスES細胞やヒトiPS細胞に応用することを目指しています。

AID法に関する材料リクエスト

ヒト細胞用プラスミド材料

ヒト培養用の発表済み材料はAddgeneおよびNBRP(遺伝子材料開発室)より入手可能です。HCT116 CMV-OsTIR1親細胞は理研細胞バンクより入手できます。HCT116 Tet-OsTIR1に関しては同細胞バンク(cellkitaku@brc.riken.jp)に直接お問い合わせください。

出芽酵母用プラスミドおよび酵母株材料

出芽酵母用の発表材料はNBRP-Yeastより入手可能です。酵母株作成に関しては本プロトコルを参照ください。

AID法に関する説明動画(JST新技術説明会 2017年2月9日)